東京の郊外で猫と暮らしてゐる。

祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響あり。如何やうな日々にて盛者必衰。

短歌ブームが起こりつつある気がする。~櫻井美知彦『半夏生』を読んで。

 少し遅くなりましたが、Twitterで非常に話題になった歌集『半夏生』の単行本を購入、読了しました。

 話題になった理由はこちらのツイートがきっかけ。2016年3月11日にKADOKAWA/メディアファクトリーから発行されたそうです。

 

 

 Teitterでは「やっと届いたー」とか「読みおわった!」って感想が4月に入ってから散見していたような気がしたし、私自身手に取ったのが4月に入ってからだったので売り切れ続出だったのかな……とも思ったのですが、もしかしたら初版発行部数が少なめだったのかなとも。

 話題になったツイートに手書きで書いてある文字がほぼそのまま一冊の本となった印象なので、購入したのに雰囲気が違うというショックはありませんでした。
 一枚一枚綺麗にスキャンして装丁を整えて、なるべく原本に近い形になるようにして発行されたのでしょう。手書きの文字は読みにくくもある一方で温かみもありました。「し」を特徴的に書く方なんだなあと思いながら読んでみたり。

 見開きの左ページに短歌、右ページに挿絵なので、元々それほど厚くないですがさらにさっくりと読めると思います。

 なんでこの一冊が「ウケた」のかなあと考えるとそれはまた別の考え方の問題になる気がするので別の機会に触れたいと思うのですが、反応している方の多くが女性であるということから単純に「ロマンチックさ」とか「貫かれた純愛への憧れ」とかが見え隠れするような気もします。
 喪失まで含めての愛に対する憧れとか、自分も大切な人に死後何年も想われたいとか、そういう意識とでもいいますでしょうか。

 実際、綺麗だとは思いました。そして純朴。変にひねくれていないから、まっすぐに「愛情」として届くんでしょうね。
 それが「短歌として」どうなんだろうか……と、考えた時にはまた別の考え方があるのかもしれません。私は和歌を嗜むけれど、和歌の研究者ではありませんから。
 なんとなく「オデッセイ」の原作『火星の人』が普段SFを読まない層から大きな支持を受けたみたいに、『半夏生』は普段歌集や短歌にふれない女性層からの支持を受けたのかなという気持ちもあります。

 私には今年の5月に83歳になる祖父がいまして、8年前に妻である祖母を亡くしているんです。1月でした。
 「(様々な理由で)読みやす」く、かつ、実際に伴侶を失っている年齢の近い高齢者の方が、より深く共感できるのではないだろうかとも考えてみたりしています。しかも、憧れとはまた異なる何らかの心情をもって。私はそれが、とても気になる。

 ……そんな思惑で祖父の誕生日プレゼントにしようと購入したのですが、ふと「誕生日なのにしょんぼりさせてしまうだろうか…」と不安になったりもして。ぴったりだとは思うんですが、難しいですね。闇雲に老人の傷を抉るようなことはしたくないので、これはこれは繊細な本と計画を企ててしまったぞという気持ちで過ごす日々です。

 

 

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